ふたご座 Gemini(略号:Gem)


午後8時の南中:3月3日 1等星:1個=ポルックス


2000.12.17 作成

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見え方

星図

ふたご座は星占いでおなじみの黄道12星座のひとつですから、月や惑星もときどき通ります。

2月ごろの夜8時ごろ南の空高くを見上げると、オリオン座が見えたらその左上を探すと明るい星が2つ見えます。

これがふたご座のα星カストルとβ星ポルックスです。晩秋の夕方には東の空に、春の夕方には西の空に低く見えます。

空の暗いところへ行くと、2つの明るい星から斜めに星の列が見え、ふたごの姿がわかります。

また、足もとにあるM35も空の暗いところなら肉眼で見えます。


写真

写真

写真では、ふたご座の足もとが天の川につかっているため多くの星が写ります。

兄のカストルは1.6等、弟のポルックスは1.2等と弟の方が明るくなっています。

カストルは青白く、ポルックスがオレンジ色なので「銀星、金星」という言い方もあるようで、夜空の「きんさん、ぎんさん」ですね。

データ:50mmF1.4→2.8 露出8分
     コダック E200
     千葉県野栄町にて


神話

星になった双子

レダ

カストルとポリュウデウケスは、白鳥に変身したゼウスがスパルタ王テュンダレーオスの妻レダに産ませた卵から生まれた。これは白鳥座の由来になっている。

2人の姿は、ローマのクィリナーレ広場にある古代彫刻にあるように、槍を持って白馬にまたがって、いつも行動をともにする姿であらわされる。

2人は間違いなく英雄であった。金羊毛をコルキスへ取りに行くアルゴー隊員の遠征に加わったり、古都カリドンを荒らした野猪の狩猟隊に加わったり、ヘラクレスと一緒にアマゾン族と戦ったり、イオルコスの町のペリアヌスのための競技会で観衆に力を見せつけたりした。また、テセウスとペリトオスが掠奪した15歳の妹のヘレナをアッティカの城アピドナイトから助け出したりする、力も勇気もある妹思いの雄々しい兄弟だった。

彼らはディオスクーロイ(=大神ゼウスの息子たち)と呼ばれた。

もちろん、彼らは牛や女を掠奪に出かけることもあった。そんなとき、彼らと行動をともにしたのは叔父のアパレウスの息子たち、つまり、従兄弟のイーダスとリンケウスだった。彼らもまた、双子である。そして、この兄弟も特殊な能力を持っていた。イーダスは何でも一瞬にして食べ尽くしてしまう胃袋を持っていたし、リンケウスは何物をも見通す鋭い目を持っていた。

あるとき、この4人は北方のアルカディアに牛を掠奪しに出かけ、みごとたくさんの牛を追って戻ってきた。ちょうどタイゲトス山にさしかかったところで、イーダスが提案した。

「この獲物をそのまま分けるのは面白くない。1頭の牛を4つに分けて早食い競争をして、早く食べ終わった2人が山分け、というのはどうだろうか」

「それは面白い、やろう」

リンケウスはディオスクーロイ兄弟を横目で見ながら言った。

カストルとポリュウデウケスはイーダスの胃袋の噂は聞いていたが、実際に見たことはなかった。いずれにしても男として英雄として断るわけにはいかない。

「OK、やろう」

カストルはイーダスとリンケウスをしっかり見つめて返事をした。

だが、結果は見えていたのだ。イーダスはカルカンのCMの猫のように自分の分の牛をバリバリ食べて、その勢いで弟のリンケウスの分まで平らげてしまった。

ディオスクーロイ兄弟は手ぶらでスパルタに帰った。

アパレウスの双子の兄弟に仕返しをしてやろうと機会をうかがっていたカストルとポリュウデウケスに知らせが届いた。イーダスとリンケウスがメッセニア王レウキッポスの娘たちと結婚するというのだ。2人はさっそく馬にまたがって花嫁を掠奪しにメッセニアへ出かけた。

レウキッポスの娘たち、ポイベとヒラエイラは草原で花を摘んでいたところを不意に襲われた。
ルーベンス

(RubensのThe Rape of the Daughters of Leucippusはこの様子を描いているが、Rapeなどという言葉の割にはキューピッドも登場しているし、中央の女性もMichelangeloのゼウスを受け入れるレダのポーズそっくりである。暴力と言うより、祝福という感じがする。)

花嫁を奪われたイーダスとリンケウスはすぐにカストルとポリュウデウケスを追いかけた。メッセニアとスパルタの間にあるタイゲトス山を越えたところでカストルとポリュウデウケスは樫の木の穴に隠れてイーダスとリンケウスを待ち伏せた。しかし、何物をも見通す眼を持ったリンケウスは2人が樫の木の穴にいることをイーダスに知らせた。イーダスはその腕力で樫の木の上から槍を突き通した。その槍はカストルの左太股を突き刺し、のちにカストルは死んだ。

「ウォー」

泣き声とも叫び声ともつかぬ声を上げてポリュウデウケスは2人を追った。そして、青銅の槍をリンケウスの右脇腹に突き刺した。しかし、その後ろからイーダスは大きな墓石を持ち上げ、ポリュウデウケスの後頭部めがけて打ち下ろした。さすがのポリュウデウケスも倒れた。

この時になってゼウスは騒ぎに気付いた。ゼウスは雷霆でイーダスを撃った。稲妻はイーダスとリンケウスを焼き殺してしまった。

イーダスとリンケウスの致命的な失敗はカストルとポリュウデウケスが大神ゼウスの子であったことを忘れていたことだ。

やがてポリュウデウケスが目覚めた。

「父上、私は死なないのですか」

「息子よ。お前は私の子だ。神の子は死なない。もう1人の息子、カストルは人間テュンダレーオスの血を引いている。お前とは違う」

「弟カストルを喪うとき、私たちのこれまでの行いの価値も喪われます。この世には、もう生を分かち合う友もいません。また、生きていく意味も感じられません。父上、私にもこのカストル同様に死をお与え下さい」

ゼウスはポリュウデウケスに死を与える代わりにカストルに生を与えた。数年後、カストルは戦場で命を落としたが、ゼウスは仲のよい2人を天に上げて双子座とした。
フラムスチード

夜空を見上げるとポルックスの方がカストルより明るく、神の子である貫禄を見せている。しかし、Flamsteedの天球図譜(1729初版)では、カストル(右)の方が大きく描かれている(左図)。また、「1991年刊のW.T.オルコット著『Star Lore Of All Age』でもカストルを1等星、ポルックスを2等星としている」(瀬川昌男『星座博物館(冬)』ぎょうせい、1990、3版)らしい。神話は古代ギリシアの詩人テオクリトス、ピンダロス、ローマのヒュギヌスらによって語られているので、1等星カストル、2等星ポルックスから生まれた物語である。今の1.2等星ポルックス、1.6等星カストルから生まれた物語ではない。どうして2等星のポルックスが神の子になったのだろう。


見どころ

M35

ふたご座の兄カストルの足もとには、散開星団M35という大型の星団であるM天体があります。

また、このあたりを双眼鏡で見ると無数に星が見えます。カストルは連星です。

M35

M35

M35は、28000光年の距離にある散開星団です。

肉眼でも兄カストルのあしもとの3つ並んだ星のそばにボーッとした光が見えます。双眼鏡でも充分楽しめます。

カストル・ポルックス

カストル・ポルックス

カストルは青白い星で、ポルックスは黄色の星です。それぞれを望遠鏡につけたデジタルカメラで撮影してみると色の違いがわかります。

ちょっと手ブレで星が三角形になってしまいましたが、色はよくわかると思います。

また、カストルは小望遠鏡でもわかる連星です。3つの星からできているように見えますが、それがそれぞれまた連星なので6連星です。


星図はアストロアーツ製「ステラナビゲータ」で作成しました。古星図は「フラムスチード天球図譜」を使用しています。

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